Q6-5.不純物、偏析による腐食とは?
歯科用合金において、均一な組織であっても偏析を生じると組成は著しく変化します。このように組成が著しく変化した場合、偏析した部分に電位差が生じ、陽極となる箇所が腐食され易くなります。 また、不純物があった場合陽極となり同様な現象が生じますが、特に不純物は結晶粒界などに析出し易いため粒界を中心に腐食され易く、粒界腐食とも呼ばれます。特に粒界を中心に腐食が促進されると粒界の亀裂の原因となります。
Q6-6.加工ひずみによる腐食とは?
合金等を加工すると、局部的に応力が加わり内部応力が発生し、この応力を受け加工ひずみを生じた部分が陽極となりひずみのない部分より腐食され易くなります。 また、加工等により合金の結晶粒界に応力を受けたりすると、結晶粒内より粒界にそって腐食が進行することにもなります。
歯科の補綴物では、ほとんどがわずかながら研磨などによる加工を受けていることになります。特に辺縁などのバニッシュによる強加工やクラスプの曲げ加工は、応力の腐食を受け易くなるため、過大な応力の付加は出来るだけ避けるべきでしょう。
Q6-7.濃淡電池腐食とは?
電位差で生じる腐食は、異種の金属の間で形成される電池が原因でしたが同じ金属でも濃度の異なる溶液中に浸漬された場合、溶液の濃度差で電池を形成するという現象で、これを濃淡電池と呼んでいます。濃度の低い溶液に浸漬した金属は陽極、高い溶液の方は陰極となって腐食が生じ易くなってきます。 口腔内の環境の変化においても異なった唾液が食物のかすなどにより供給され易いため、局部的に濃淡電池を形成し易くなります。
口腔内の補綴物が唾液中で各部に酸素の量に差があった場合も、同じような電池を形成する現象となり、酸素濃度の要因から発生するため特に酸素濃淡電池とも呼んでいます。 酸素の濃度差の影響を受けて、酸素濃度の低い部分が陽極となり腐食され易く、口腔内でもこのような条件が起こりがちです。
合金表面に直接プラークが付着したり、合金表面に凹部(微細な割れ、傷、鋳巣)があったり、ポンティック
の基底面、隣接面の接触辺縁での隙間等の口腔内の環境下では、著しく酸素供給量が低下します。特にこれらのくぼみはプラークで覆われるため濃淡電池が加速され、さらに深く腐食が促進されます。 腐食が点部分の小さな穴状に進行していく現象を特に孔食とも呼んでいます。
表面状態の影響を避けるためにも、合金表面はなるべく凹凸状を少なくし、表面傷をなくすためにも平滑に研磨を仕上げるべきでしょう。 |